RobbinⅠ-帝王の花嫁- 第五章(4)
「何だと。黒田専務が現われて、現金入りのトランクを桑田社長の車から移
し替えてるだと!奴ら一体、何を考えてるんだ」
八王子インターを通過中だった村上警部補は、連絡を受けて唖然とした。
急いで中央高速のパーキングエリアの案内図を膝元に広げる。
「……今のところ、犯人らしき人物からの接触は無いようですが、どうしまし
ょうか」
「先行の車はどの辺を走ってるんだ。間に合いそうなら、彼らと合流させろ」
「今、上野原インターを通過中です。談合坂サービスエリアまでは、七キロ
ほど距離があります。時間にすれば二、三分ですが、間に合いません」
「よし、現金が黒田専務の車に移動したことは、間違いないんだな」
「……はい。二人で移し替えてましたから」
「じゃあ、仕方がない。現金が載ってる方を追うしかない。黒田専務と桑田
社長はどうしてるんだ」
「……二人とも車の中でじっとしてます。動き出す様子はありません。あ、
黒田専務の車が動き出しました。桑田社長の方はいいですか。何だった
ら我々のうち、片方が残りますが」
「わかった。じゃあすまんが片方が残って、桑田社長を見張っててくれ。我
々も大至急そちらに向かうが、我々の先行車が先程、そこの一つ手前の
上野原インターを通過してる。そこに居残った人間をピックアップして、そち
らに追い付いて合流するよう指示しておく」
「……わかりました。では沼尾刑事に残ってもらいます」
黒田専務のレパードは、カーブの多い雨の中央高速を凄いスピードで飛
ばして行った。
『何て運転しやがるんだ。危なくて仕方がないな』
ともすれば振り切られそうなほどで、八木刑事は前方のレパードを見失
わないように付いて行くだけで必死だった。やがてそのレパードが『初狩
パーキングエリア』の表示に従うように、ウインカーを左に出した。
『何だ?まさか今度も誰かが待ってる、とでも言うんじゃないだろうな』
彼の嫌な予感は見事に的中した。佐々木が先程の黒田同様に、休憩所
に到着したレパードを傘をさして出迎えている姿を見た時、八木刑事は再び
無線を握り締めていた。
「何だと。今度は佐々木常務が待ってただと!」
「……また現金の移し替えをやってるようです。ただし二つだけです。一つは
黒田専務のレパードに残されています」
村上警部補は、犯人一味に右往左往させられている自分達を感じて、嫌
な予感がした。
「何で、そう何度も現金を移し替えなきゃならんのだ、我々を混乱させるため
なのか。二台に分けてどうしようって言うんだ。おい、黒田専務と佐々木常務
を見張ってた班の連中は、もう引き上げちまったのか。一人くらいは念のため
に残しとくのが、漏れのない捜査の基本中の基本だぞ。くそったれめが!ど
うして奴らがここにいるんだ」
その時、別の無線が入ってきた。
「……沼尾刑事からの緊急連絡です。桑田社長の車が先程、先行車が沼尾
刑事をピックアップする前に動き出したそうです」
「何だとう」
「……八木です。二人は別々に発進しました。仕方ありませんので、トランク
二つを載せて先に動き始めた佐々木常務の方に絞りますがいいですか。佐
々木常務の方は凄いスピードで飛ばしていますが、それに比べれば黒田専
務の方はゆっくりです」
「わかった、そうしてくれ。今、沼尾の方から緊急連絡があって、桑田社長の
車が動き出したそうだ。まさかとは思いたいがその先の休憩所で、今度は佐
々木常務と桑田社長が落ち合うかも知れん。充分注意してくれ……釈迦堂
か境川か、或いはもっと先かもしれん。こうなったら犯人が双葉サービスエリ
アと言ったのも疑ってかかった方がいい」
「村上警部補、まさかとは思いますが、犯人の狙いは元々、三つに現金を分
散させることだったのではないでしょうか」

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